「彼氏???えっ誰に、私に??ないないないなに言ってるのりっちゃん。暑さで頭やられちゃったんじゃないの」


「…そこまで全力否定しなくても…」

彼氏なんて私にはいたこともない。
だからなぜりっちゃんがそんなことを言い出すのか、さっぱりなのだ。
昔から男っ気のないと言われてきた私に彼氏が出来たなんて噂があったとは。



なんでそう思ったの、と私が聞くより早く、りっちゃんは本日二回目のにやり、を出した。



「でもつむぎがかっこいい人と二人で帰ってるの見たって言ってた子が」


「かっこいい…人?」


「うん。町役場や図書館の方面からって」


図書館から私と帰って目撃されるのなんて…先輩しかいない。

合致した。確かに先輩と地元の道を帰っていたら目撃されていてもなんら不思議はない。
なんだか先輩に申し訳ない。
私みたいな年下のなんの取り柄もないような子と一緒にいるところを目撃されるなんて。
まあ、先輩と同じ学校の人なんてこの近辺にはいないから、先輩が噂されることなんてないだろうけれど。


「りっちゃん、その人は彼氏じゃないよ。図書館でよく会う人なの」


先輩と恋人に間違えられることが嬉しいよりも先に
先輩の耳にこんな噂が入ったら恥ずかしさに耐えられないという気持ちが勝る。
いくら淡い気持ちとはいえ、恋心が露見してしまうようなこと、あってはならない。

そんな私にりっちゃんはなおも
「でもつむぎ、恋してるって顔、してるよ」
なんてことを言ってくるのだ。