夏祭りか。そういやそんな季節だ。
どうりで暑いし蝉もうるせぇはずだよ。


隼人は町の町内会でなにやら仕事をしているらしく、夏祭り実行委員の一員だ。
おかげで毎年俺は手伝いに駆り出されている。
隼人に世話になっている手前、どうにも断ることができずにいるのだ。

どうせ俺なんて厳ついのも髪型だけなんだ。親戚の頼みも無下に断れないようなそんな奴だよ。



「夏祭り、か」


そういや誘ったらどんな反応するだろうか。
つむちゃん。宮原つむぎ。
同じクラスの女子。

つむちゃんは小さい頃に幼稚園が一緒で、高校に入って同じクラスだったことから仲良くなった。

小さい頃も仲良くしていたらしいが、まあ幼少期の記憶なんて不確かなものだから、俺もそんなに覚えているわけではない。
ただ家には、つむちゃんと写っている写真がいくつか残っている。



つむちゃんはかわいい、と俺は思う。
華奢とはまさにらこのことと言うほど細い体に、透き通るように白い肌で、その女の子らしさは男子にも女子にも評価が高い。
クラスには他にも可愛い子はいるが、俺はつむちゃんが断トツで可愛いと思う。
不良だなんて呼ばれてる俺に絡まれても嫌な顔せずににこにこと話してくれる。

天使か……いや人間だけど。



「誘ってみっかな…」

果たしてつむちゃんはいいよと言ってくれるだろうか。
彼女の浴衣姿なんて想像したら俄然、夏祭りの手伝いくらいしてやってもいいかななんて気になる。


単純か、俺。



「それにしてもあっちぃー」


◇橘 恒生の夏