あの日から、ずっと……

 その日、私が職員通路を出ると、髪の長い綺麗な女性が立っていた。


「こんばんは…… 今日は大変だったわね……」

 その女性はこの間、廊下でぶつかった受付の人だ……


「えっ。どうしてその事をご存知なんですか?」


「私、立花綾香(たちばなあやか)。吉川主任の彼女よ。もし、これ以上私の吉川主任に近づいたら、今日の事ぐらいじゃすまされないかららね!」


「えっ。どういう事ですか?」


「あははっ。ガキには分からないのかしら。この工場はね、みんな私の言う事を聞くのよ。吉川主任の事を思うなら、私の言う事を聞きなさい。分かったわね!」

 立花さんは、ニヤリとほほ笑んだあと、キッと睨みくるりと背を向けて、ヒールを鳴らしながら車へと向かって行った。


 綺麗な人だ……

 そうだよね…… 

 泰知兄ちゃんに彼女が居ないわけがない……


 私は、何を期待していたんだろう……


 妹みたいに、優しくしてくれていただけなんだ……


 私の胸の中が、苦しくて、苦しくて、涙が止まらず溢れた……