出掛けるよ。


また行くの?どこに行くの?どうして行くの?


今までだってたくさん行ったろう?さぁ、準備して。とっておきなんだ。


体と心と言葉の均衡が保てない。
ぐらぐら、ぐらぐら、と私の頭の中で音がする。


……行きたくない。


え?


行きたくないって言ったの!
あなたは、私が見たいものを同じ目線で見たいって、そう言ってくれたけれど
私も、あなたの見たいものを一緒に見ていたいけれど
でもそういう、夢のようなことばかり言ってられないの。
わかるでしょう?



ぎゅっと目をつぶって言い切ってしまった後
そこに残っているのは静寂と
ゆるい蛇口から落ちる水滴の音と
どくどくとうるさい私の心臓と
彼の、ごめん、という短い言葉だけだった。