つり革を握る。
ぎゅっとぎゅっと。

彼は私の手をこうは握らないだろう。
きっと。

満員電車。
疲れ切った人の姿。
そこに混ざっている私。
ふと顔を上げると、電車の窓に疲れ切った顔が見えた。

お化粧もなにも隠してくれない、いつもの何倍も老けたような。

見たくない。見たくないよ。
爪が食い込む。
きっと跡が付いている。

窓ガラスの向こうは、私の大好きな夜が広がっているのに。
それなのに私はもう、そこに鮮やかな何かを見出すことはできなかった。