君に謝らないといけないね。
黙っていたこと、悪かった。
楽しかった。
沢山、いろんなところに行けて。
君のことを考えてあげられなかったけれど。
有難う。
僕の我儘に付き合ってくれて。
夜の端で見てるから。
だからそんなに泣かないで。
泣かないで?そう言ったの?
彼の唇から漏れる、ほとんど息に近いその言葉で、私は自分が泣いていることに初めて気がついた。
気がついたらもう止められなかった。
心が空っぽの入れ物に戻ってきた、そんな気がした。
彼は手を伸ばしかけて
多分力が入らなくて、
弱々しく微笑んで、言った。
おやすみ。いい夢を、と。

