私は大勢より1人でいるのがすきで
彼もそうだった。
昔から本を読むのがすきで、彼もそう。
夏よりずっと冬を恋しく思っていたし、
夜が何よりの幸福を連れてきてくれた。
私と彼との共通点は探せばもっとあるだろうけれど、
彼は私に何がすきかを訊いてきたことはなかったな、とふと思う。
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何がすきですか、を訊くのは容易いことだ。
でも僕は、それを訊くのがとても失礼なことのように感じるんだよ。
もし僕にとって君が、関係を発展させなくてもいい、
ただの語学の講義が同じなだけの女の子だったなら
僕は友達になるためだけに訊いただろう。
「君は何がすきなの?どんな音楽をよく聞いて、誰の絵がお気に入り?」ってね。
でもそうはしたくなかった。
君がすきになったものはきっと
これまで生きてきた時間の中で体験し、感じたことを通して
君が愛しいと思ったものたちだ。
君の目がなにを見て、なにを感じて、どんなものに惹かれているのか知りたかった。
でもそれは、君と同じ目線で見なければ、
僕に光り輝いてはくれないんだよ。
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確か、彼はそう言ったはずだった。
そういう人だった。
私も彼の見ている世界を隣に立って眺めていたいと思った。
だからこうしておとなしく手を掴まれている。

