仕事で東京を離れることになった。
1週間ほどのこと。
最後の旅行から2ヶ月が過ぎ、季節はすっかりめぐっている。
相変わらず忙しい仕事に慌しく働き、
私は私のことで手一杯だ。
与えれた仕事をしっかりこなしてこよう、そう思っての1週間だった。


彼がなぜ私を様々なところに連れて行ったのか未だによくわかっていなくて。
彼のことをわかっていたかったのに、寡黙な彼は何も言わないから
だから私も訊かないでいた。
訊いたら教えてくれたのだろうか。


東京を離れて4日目の夕ご飯前。
彼の母親から電話がかかってきたのは丁度そのくらいで。
私は少しの違和感を感じながら、スマートフォンを耳に当てて
何度か一緒にご飯も食べに行った彼のお母さんの、今にも泣きそうな声を聞いた。