写真を撮ろう
と彼は言って、いつもの重たそうなカメラを構える。
カメラを覗き込む彼の真剣な横顔も夕日で橙に照らされて
彼の指でこの景色は永遠に切り取られて
だけど気持ちまでは、
この空間の空気までは切り取ることができないのだろうことを
とても、とても残念に思った。
鮮やかな橙が、赤が、次第に黒ずんでいく空が、濃紺が
私の目を縫い付けて離さない。
美しい。
ただひたすらにそう思った。
今まで見たどの景色よりも美しかった。
これが、私と彼との最後の旅行になった。
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