確かにいないと思います。人はみんな心のどこかに優しさを持っていて、同時に酷さも兼ね備えています。



それが心というものであって、優しいだけの心なんて存在しません。



「でも、そういう心が存在したら素敵なことだと思いませんか?」



私はいつもそう言って微笑み返します。そして、そういう心を手に入れるために、優心という名前に恥じない人間になるために、今まで生きてきました。



いじめをしない。友達のいない子と仲良くなってあげる。言われたことをなんでもする。相手を怒らせない。もちろん自分も怒らない。常に笑顔を振りまく。



そうして生きてきた私に付いたあだ名は、「八方美人」。意味は、誰に対しても愛想よく、上手く振る舞う人のことです。