藤堂さんと部屋に戻った、僕は
まだこの組織に入ったという実感が無かった。




入るつもりが無かったから。






「紫陽花、風呂 行ってきなよ!」




「....はい、行ってきます。」




手拭いを持ち、風呂場へ向かった。





風呂の扉を開けると とても広々としていた。



男があれだけの人数が入るのだから
当たり前だけど。





風呂はなんと 檜で出来ていて
檜の香りがとても良くて 癒される。





それから、頭や体を洗って 風呂を出た。





藤堂さんに着物を渡されたけど
着る気がないので 自分の服を着た。





僕の素顔なんて見せられるモノじゃないから....





けど、僕は 部屋に帰ると何故か
藤堂さんに文句言われる羽目になった。




土方さんと、勝負した日が過ぎた
翌日の朝が来た。





早めに目が覚めてしまったので
愛刀と手拭いを持ち 部屋を出た。





今日は 所属発表と自己紹介をする日だ。






こういう事があると
改めて 壬生浪士組に入ったんだと実感する。






服装は、今のままで良いと
近藤さんや山南さんも許可くれた。





着物だと、姿を見られてしまうから
ほっとした。

部屋を出ると、まだ少し外は 薄暗く
涼しい風が吹いた。




井戸で顔を洗い終わり
部屋に戻っても もう眠れる気がしないので


中庭に来たついでに
刀の素振りをする事にした...




――ビュンッ!!!...ヒュン!!!...ヒュンッ!!!!!




何回か素振りしてると、
縁側の方から1人、廊下の方で1人の
気配がしたので そっちに顔を向けると...





「おはようございます、斎藤さん。」





廊下にいた人の気配の正体は
斎藤さんだった。




けど、斎藤さんは 何か考え事をしてる様で
声をかけたら ハッとした表情を見せた。





「...おはよう、早いな。」




クールな顔が一変して、少し焦っているようだった。




「えぇ 早く目が覚めてしまったので、
やる事も無いので...素振りをしてました。」






「もう、俺らは仲間だ。



呼び方も敬語も気にしなくて良いのだぞ。」





僕は、壬生浪士組に入隊はしたけど....
隙も素や正体も 1㍉とも見せるつもりないし



信用だってした訳じゃない。





「いえ...気にしますよ。



僕は 皆さんより入り立てですし
斎藤さんは 僕より上じゃないですか!」






「そんな気を張り続けると 体が持たないぞ...。」





斎藤さんは 心配してくれているようだ...




そんなの、僕に心配する価値無いのに。





「お気になさらず。」





僕は 斎藤の言葉を流し、素振りを再開した。





暫く、素振りを続けてると
良い汗を流したので 素振りを止め



汗を拭いていると まだ、斎藤さんはいた。




「斎藤さん、もう直ぐ 朝餉の時間でしたっけ???」





「...あぁ。」





「僕、朝餉の準備 お手伝いしてきますので...失礼します。」





僕は 斎藤さんにお辞儀し、台所に向かった。




斎藤さんが 切なそうに...


僕の背中を、ずっと見つめてたなんて
知らずに.........。



「おはようございます。」




にっこりと温和な笑顔で返してくれた。



けど...山南さんのビックリ顔...レアかもw



僕が"盗み聞きはいくら何でも!"と言うと
また 驚いた顔になった♪




でも 山南さんの温和な笑顔は
僕の冷めた心を温めてくれる。



そんな想いを秘め、少し長居してしまったので 山南さんに一礼して


逃げるように その場を去り
台所へ向かった。