たとえこの身が焼かれてもお前を愛す

地面には馬に踏みつぶされた買い物かごや食材が無残に転がっている。

「どしよう....今日の夕食が....」途方に暮れる。

「俺からハンスに説明してやろう。心配するな」

うなずくと、フィーアは残骸を拾おうとした。


「そのままにしておけ」

「でもこのままでは」


「はしに寄せておけばいい。明日、片付けさせる。それまでにタヌキやタカの食料になるだろうけどな。やつらも馳走にありつけるから今夜はパーティーだ」


フィーアは目をパチパチしてしまった。
今のセリフは本当に大陸一の勇者が言ったのだろうか?


あまりにも意外すぎて、エルンストの顔を凝視してしまった。

「今夜は月も綺麗でございます。きっと動物たちのパーティがありますね」

失言に焦ったエルンストは急に「何の事だ?」と、とぼける。


そんなエルンストを無視してフィーアは言葉を続ける。

「こっそり見に来ますか?」


「は?俺はシュバルツリーリエの団長だぞ。そんなことするかっ!」
少しムキになっている。

「本当はご覧になりたいのでしょ?」まるでへそを曲げた子供に話しかけるような口調でフィーアが語り掛ける。