たとえこの身が焼かれてもお前を愛す

全身は汚れ、背中の中ほどまで伸びた髪はホコリと砂でデコレートされているこの女が金貨50枚だと?

冗談にもほどがある。


青年は話にならないとばかりに顔の前で手を振った。


「この女にそんな価値があるとは思えんな。
残念だが、またの機会にしよう」


彼は馬の鐙(あぶみ)に足をかけた。


「ま、待ちなさいって旦那。慌てちゃいけねえぜ。見た目は汚いがこの女を買って損はありませんぜ」


慌てて男は青年を引き留めにかかった。

ここに来て、どうやら欲を出してきたようだ。



「では、いくらまでまける?」


切れ長の目でジロりとにらまれた男は、

「さ、30枚までまけますよ。旦那にはかなわねえなぁ」


「よかろう。その女買うぞ」


懐から革袋を取り出すと、男にそのまま投げつけた。