たとえこの身が焼かれてもお前を愛す

「つかまれっ!!」

エルンストは俺につかまれっと言っているのだ。

「で、でもっ」やはり躊躇してしまう。

よほど驚いたのか馬はいな鳴きをあげながら、興奮した様子でエルンストの制御を無視して頭を激しく振り、前足をあげ暴れ続けている。


「振り落とされたいのかっ!!」

落馬したら最悪絶命してしまう。

「は、はいっ」

フィーアはかごを離すと、エルンストの胸に顔を埋めて夢中でしがみついた。

「どうどうっ!!」

なかなか馬は落ち着きを取り戻さない。

それでもエルンストは慌てることなく、冷静に手綱を操る。


しばらくして”ヒヒーン”甲高い声とともに、馬は前足を一段と高く上げると、それが合図だったようにおとなしくなった。


「よしよしいい子だ」

馬の首をトントンと優しく叩くと、今までの興奮が嘘のように、馬は落ち着きを取り戻した。