たとえこの身が焼かれてもお前を愛す

「────もういいか?」

その声でフィーアは、はっとする。故郷の草原に想いをはせて時間を忘れていた。

「も、申し訳ありません」慌てて頭を下げる。

私につきあって待って下さっていたのだわ。フィーアはエルンストの優しさに触れて心が熱くなるのを感じた。


「乗れ」馬上からエルンストが呼びかける。

「えっ?」

「ハンスが夕飯を作れないだろう」

「ですが.....」


フィーアがためらっていると、馬上から長い手が伸ばされて、ひょいっと体を抱えて、自分の前に座らせる。

「あの....ご主人様」
手綱をもつエルンストの腕の中で、ほほを赤くしている自分に気づく。

「俺も腹が空いている」不愛想に告げると、エルンストは手綱を叩き、馬はゆっくりと歩きだした。