たとえこの身が焼かれてもお前を愛す

「ふん」興味なさそうな声を出すエルンスト。

「宵待ち草はわたくしの故郷でも沢山咲いておりました」

フィーアは屋敷に来てから自分の事は何ひとつ話そうとはしなかった。

自分から話しをするまでは、エルンストもあえて聞かないようにしていた。
無理に聞こうとすれば、奴隷になる前がどんなに幸せでも、自分の身内が罪人となった記憶の扉をいやがおうにも開かなければならない。

フィーアを悲しませたくはなかった。

我ながらどうしたのだ?

以前の俺ならそんなことなど気にせず、あれこれ聞いていたものを。

この娘が相手だと、どうも調子が狂う。エルンストは自身に首をかしげたい心境だった。

この娘を大切にしたい。
それは決して同情や憐れみではなく....。

自分でも良く分からない不思議な気持ち。いつしかそんな感情がエルンストに芽生えていた。


幸せそうな表情で宵待ち草を見つめるフィーアをエルンストも静かに見守っていた。


穏やかで優しい沈黙が二人の間に流れていた。