たとえこの身が焼かれてもお前を愛す

「今日は摘まないわよ。ギードにバラをもらったの」

フィーアは宵待ち草に話しかける。

黄色い絨毯は、まるで風に湖面をなでられた波のように揺れた。

「うふふ、あなたたちとっても綺麗よ」

夜に咲いて、朝にしぼむなんて何だかロマンチック。お月様とお友達なのかしら?
宵待ち草っていう名前も素敵。

フィーアはうっとりと風に揺れる黄色い花を見つめていた。



......



「────何をしている?」


「えっ?!」突然の声に驚いて振り向くと、エルンストが愛馬にまたがってフィーアに少し冷めた瞳を向けていた。


「ご主人様っ、気づきませんでした」


宵待ち草に見とれるあまり、フィーアはひずめの音に気づかなかったらしい。


「雑草と話しが出来るのか?」

「雑草ではございません。宵待ち草でございます。夜になると花を広げるのでございます」

フィーアは花に顔を近づけるとその香りをかぐ。

「とてもいい香りでございますよ」

「夜に咲くなど、随分ふしだらな花だな」

「えっ?!」フィーアはその瞳をしばたかせた。

「ふ、ふしだら....でございますか?」

「まるで娼婦のようだ」

ああ、ご主人様。

宵待ち草が娼婦だなんて。

ご自分が夜に娼婦と花を咲かせておいでだから?

フィーアは悲しくなった。

「せめて夜にひっそりと咲く、奥ゆかしい女性とは思えませんか?」