たとえこの身が焼かれてもお前を愛す

皇帝と騎士団の一行を見送ったフィーアだったが、

....ご主人様は私と一度も目を合わせなかった。
何とも言えない違和感が残っていた。

お気づきにならなかった?

それならそれで良いのだけれど。


剣術が学べるのは貴族階級のみ。

平民はさっきの子供のように遊び程度にしか剣を使えない。

自己流と教わったのではレベルに雲泥の差がある上、剣術にも流派がある。

そこから身元が知れる恐れがある。


身元を明かすことで現状が良くなるとは思えない。むしろ新たな火種を生みそうでフィーアは過去を誰にも話たくなかった。

そう思いながらも、何故か胸に塊のようなものを感じるフィーアだった。



服のホコリを払い、買い物かごを手に取った時、


「これ嬢ちゃんのかい?」

さっきまで酔っ払い同士の喧嘩を見ていた野次馬の男性に声をかけられた。


男性の手には無残に花びらを散らしたバラの花が。


「ボロボロになっちまったな」


「せっかくギードがくれたのに」花を受け取ると、そっと買い物かごの中にしまう。


「ご主人様にはよく謝るんだね」


「ええ」


男性にお礼を言うと、フィーアは屋敷に向かって歩き出す。