たとえこの身が焼かれてもお前を愛す

領土の視察から帰って来た皇帝の一行だったのだ。
シュバルツリーリエ団長であるエルンストも当然随行していた。



「さすがエルンスト。造作もなかったな」


「お騒がせいたしました陛下」エルンストはゲオルグの馬の前まで来ると、ひざまずく。

一連の素早いエルンストの動作を見ていたフィーアはトクンと胸が鳴った。
女の私ではああは出来ない。
エルンストを男らしと感じた。

「よいか、わが領民どもよっ!
世の領地で無益な殺傷は許さぬ」馬の上から呼びかける。


「「へへー」」


野次馬たちはこれでもかとばかりに、地面に顔をこすりつける。


「時に娘、ケガは無いか?」視線をフィーアに向ける。


「恐れ多いことでございます。陛下」

フィーアは顔をあげず、下を向いたまま答えた。

「おもてをあげて、世に顔を見せてみよ」


「陛下っ!!」エルンストだった。

「この後、皇妃様と観劇のご予定がございます。急ぎませんとっ」


「ああ、そうであった。娘、そなたの剣さばき見事であった」

そう声をかけると、「行くぞエルンスト」ゲオルグは馬にムチを打った。


「はっ」騎士団の一行はそれに続く。



そして皇帝一行はひずめの音を立てながら城へと帰って行った。