たとえこの身が焼かれてもお前を愛す

「小娘!邪魔すんじゃねーよ!」

もう一人の酔っ払いが怒鳴る。

完全に言いがかりだ。

その男がまたしても、フィーアめがけて剣を振り上げてきた。

勘弁してくれないかしら。私は関係ないのに....。フィーアは内心舌打ちすると、剣を構えて男を見据える。


そして男の振り下ろす剣を難なくかわすと、フィーアはスカートをブワッと跳ね上げ、よろめいた男の背中を思いっきり蹴りつける。


「まだやりますか?」と余裕の表情。


野次馬からは「いいぞ姉ちゃん」「男のくせにだらしねえぞー」
無責任な掛け声が飛ぶ。



ドサっと派手な音を立てて地面に口づけした男は、


「もう許さねぇ!ぶっ殺してやるっ!!」

野次馬の声に煽られたせいで、フラフラと起き上がり剣を構え直すと、盛りのついたイノシシのごとく切りかかってきた。

隙だらけの攻撃をヒラリとかわし、フィーアは男の手元めがけて渾身の一撃を食らわす。


”カーンッ!!”辺りに響き渡る金属音。はじかれた男の剣は宙を舞い、今度はカラカラと音をたてて地面に落ちた。


「くそっ」剣を拾いに行こうとした男の背中に「そこまでだ!!」
鋭く聞き憶えのある声がかかった。