たとえこの身が焼かれてもお前を愛す

「そのへんでやめておけ」


不意に頭上からかけられた声に、「何だ?」とばかりに怪訝な顔をして男は手を止めると声の主を探す。


男の後ろには見事な毛並みの馬に乗り軍服を着た青年の姿があった。


「奴隷といえども人間だ。あまり手荒なことはするな」


端整な顔立ちに切れ長の鋭い瞳。髪の色はシルバーブロンドだった。
体型は細身の筋肉質と言ったところだろうか。


軍服の胸には数々の勲章が光り、飾緒(しょくちょ)と呼ばれる右肩から胸にかけて金色に輝くロープ状の紐が見るからに豪華だった。


「はん。どこぞの騎士団の将校さんですかっ?」


男は忌々しそうに言葉を吐く。


「悪いですけどね、こいつらは俺の物なんですよ。
いかに将校さんでも文句を言われる筋合いはないんでね」


「鬼畜め」侮蔑の視線を男に向ける。


「なんとでも言ってくださいよ。そもそも奴隷に人権がないことくらい旦那だってご存知でしょ?言うなればこいつらは俺の家畜なんですよっ」


男は青年の忠告を無視してヒステリックに奴隷女にムチを下ろした。

買わない奴に用はない。そう言いたげだ。