────ゾフィーの元を辞した二人は城のバルコニーにいた。

ここからは城下が一望できる。

「俺はお世継ぎを支えながら、この帝国が良い方へと向かうよう努力したいのだ。貴族、平民の垣根をはずし、奴隷階級の無い国にしたい」


秋の訪れを告げる風がフィーアの髪とドレスを揺らす。


「是非そうして下さいませ。そしてルイーズとギルベルトが結婚できる世にしてください」

「ああ、二人は大切な恩人だ。今、法改正を急がせている」


エルンストはフィーアの腰に手をまわした。


「ゾフィーはこれから色々な問題とぶつかるだろし、宮廷闘争に巻き込まれるかもしれぬ。頼むぞ」


「はい」フィーアは微笑みで答える。


「エルンスト様の目指す帝国実現の為、お世継ぎのご誕生がますます楽しみですね」


「ああ」エルンストは微笑み返す。



フィーアの腰を抱くエルンストの手に力がこもる。


「フィーア、実は....一度聞きたかったのだが.....」口ごもる口調がエルンストらしくない。

フィーアは首をかしげる。

「何ですの?」


エルンストはためらいがちに口を開くと、

「ファーレンハイトに心を動かされたことはなかったのか?」

フィーアは驚いた顔をする。「まあ?何故です?」


「あいつは俺に勝るとも劣らない色男だし、どうもあいつがお前を見る目がその....」

「うふふ、焼きもちを焼かれているのですか?」クスッとフィーアは笑と、

「エルンスト様は絶望の片隅からわたくしを救ってくださいました。
わたくしの心の鎖をお持ちなのはどなたでしょう?」


「こいつめっ」フィーアを背中から抱きしめた。

フィーアはエルンストの手に自分の手を重ねる。


「俺たちの跡取りも急がねばな」


「まぁ、エルンスト様」


「愛している」


二人を引き裂くものも、隔てるものも、この世に存在しない。


ほほを赤らめるフィーアに、エルンストは後ろからその甘く濡れた唇に優しく唇を重ねた。



・.。*・FIN・.。*・