たとえこの身が焼かれてもお前を愛す

「それには及びませんっ!」

誰もが驚き、声に振りかえると、そこには監禁されていた皇妃ゾフィーと、ゾフィーを支持する貴族たちが立っていた。

ファーレンハイトが離宮から連れ出して来たのだった。


「皇妃陛下」

ベーム以下衛兵たちはひざまずき、頭を下げる。


「皇帝陛下は御乱心のため、お亡くなりになりました」

静かにゾフィーが宣言する。


「皆の者、聞くがよい。皇帝なき今、妻であるわたくしがこの国を統べる資格があります。皇帝の全権がたった今わたくしに移譲されました」


はっきりとした口調だった。

紛れもなく女帝の顔になっていた。そしてゾフィーの対応は早かった。



「ファーレンハイト中将、ゲルフェルト侯爵を国家反逆罪で拘禁してください」


「はっ、直ちにっ」ファーレンハイトは敬礼すると数人の部下を連れて出て行く。



「ベーム大佐。あなたには側室グレーテの身柄をお願い致します」


「心得ました」ベームも部下を従え出て行った。


皇帝派と反皇帝派が存在する宮廷。

事態の読みを誤れば、ゾフィー自身の身が危うくなることを若き皇妃は認識していた。

閃光のごとき速さでゲルフェルトに近い貴族もことごとく拘禁してしまった。