たとえこの身が焼かれてもお前を愛す

────バタバタと大勢の人間が走る音が廊下から聞こえる。


ゆっくりと唇が離れると、二人は視線を交わした。


「近衛兵が来たか」


二人は覚悟を決めていた。


エルンストは死罪を覚悟し、そしてフィーアは、本当なら自分が背負う罪をエルンストが被ってしまったことに対する贖罪を胸に秘めていた。

それにエルンストのいない世界なんて色を失ったようで生きたところで何の意味もない。

だからお供する。

「俺はもう十分だ。どうせベーゼンドルフ家は俺の代で終わると覚悟していた。お前はゾフィーの元で生きられるように伯父上にはからってもらう」


フィーアは静かに首を振った。


「エルンスト様の深い愛をこの身に受けて、わたくしはヴァルハラの門の前までお供いたします」


「駄目だ。お前は生きろ」

エルンストの大きな手の平はフィーアのほほを包み込む。


「ご自分ばかりずるいです」涙の中に微笑みがあった。



近衛兵数人を引き連れて駆けつけたベーム大佐は目の前の光景に言葉を失った。


「こ、これは.....」

ベームに続く兵士たちも同様だった。皆蒼白になり言葉を発することをためらっていた。と言うより、呪術にかかったように動けなかった。


床に倒れる皇帝ゲオルグの横にはユリの家紋が刻まれたエルンストの剣が赤く染まって落ちている。


「エルンスト閣下....まさか」


「そのまさかだ」床に座って片ひざを立てていたエルンストは静かに口を動かした。


しばらくの沈黙のあと、


「エルンスト・フォン・ベーゼンドルフを拘禁....しろ」

ベームが静かに、そして悔しそうに部下に命令した。

そこには上官に対する畏敬の念が込められていた。