たとえこの身が焼かれてもお前を愛す

「どうぞ」

エルンストの前には赤い液体が入ったグラスが置かれた。


「お屋敷に届けているワインより数段落ちますがね。
私ら平民はあんな高級ワインは取り扱うだけで、口に入れることは出来ません」

アンゲラーはグラスを口に運んだ。

エルンストもひと口飲んでグラスをテーブルに戻した。

美味しくない。それが正直な感想だった。


するとアンゲラーの妻らしき女性がエルンストに質素な夕食を出す。

パンにスープ。それにわずかな肉。

だがエルンストにとって質素なだけで、アンゲラー家では普通の食事だった。


「あなた様のお口には合わないかもしれませんが、これしかないのですよ」

アンゲラー夫人は料理を配膳すると姿を消した。


「平民とはこんなもんです」アンゲラーは笑った。


「ありがたく頂こう」エルンストはパンを口に運んだ。


「お城では毎晩豪華な晩餐会があるんでしょうな?」


「ああ」


肩身が狭いのは何故だ?


平民を見下しているつもりは無かったし、貴族が特権階級とも思っていなかった。

下の人間に労を強要し、上の人間が搾取しそれを良しとして生きる。

このいびつな関係を疑問になど思ったことも無かった。


これこそが貴族の特権意識だったのだ。

そして今自分はその平民に助けられようとしている。

俺の生き方は間違っていたのか?

自問自答するエルンストだった。