たとえこの身が焼かれてもお前を愛す

────城下町に入り探していた酒屋はすぐに見つかった。

店の主人、ギルベルトの父親は快くエルンストを迎えてくれる。

今すぐに城へ向かうと主張するエルンストにアンゲラーは穏やかに諭す。


「エルンスト様、今日はもうお城には入れません。陽が落ちるとお城の鎧戸が降ろされ、我ら平民が入れなくなるのは、あなた様のほうが良くご存じのはず」


「すまん、つい」エルンストは疲れたように額を押えた。

焦るあまりそんな初歩的なことすら忘れていた。

貴族であれば、やれ宴だ夜会だと出入りは自由だが、平民の出入りは時間が制限されている。

エルンストは勧められた椅子に諦めたように座った。


「お気持ちお察ししますが、今夜は我が家でお過ごしください」


「ああ、世話になる」


案外素直に聞き入れたな。そうアンゲラーは思った。

貴族となると、自分のエゴを押し通す人間が多いものだ。アングラーはそんな経験を幾度となくしてきた。
貴族の特権とやらで、『なんとかしろ』と、どれだけ言われて来たことか。

そんな心配が無用だったことに胸をなでおろし、そしてこの若者は帝国の現状を変えてくれるかもしれない。雑談をしながらそう感じていた。