たとえこの身が焼かれてもお前を愛す

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フィーアを奴隷にした張本人は我が君主だった。

自室で君主への憤りと抑えられない衝動を抱えエルンストは苦しんでいた。


今頃どうしているだろうか?

辛い目にあっていないだろうか?

泣いていないだろうか?

あいつは泣き虫だから。


エルンストは終始落ち着かない様子で部屋をうろうろしていた。

屋敷から抜け出す妙案が浮かばない。


窓の下を見ると、エルンストが屋敷から逃亡しないように見張りの兵士が巡回している。

「これでは謹慎ではなく監禁だ」

大きくため息をつく。


あれは俺の部下達ではない。他の部隊から呼ばれた連中か?


エルンストはベッドに座り込む。


シーツに手を置くと昨日の記憶がよみがえる。

そうだ、たった昨日のことだぞ。エルンストはその切れ長の瞳を閉じる。


フィーアの吐息。

抱きしめた温もり。

愛し合った肌。


それが幻のように俺の手からすり抜けてしまった。

大切なものがみんな俺の前から消えてしまう。いつもそうだ。

何故俺の前から姿を消した?

これは何かの報いだろうか?

戦場で俺が殺してきた敵国の兵士の呪いか?

過去の記憶がエルンストの心をむしばむ。



.....いや、俺は以前の俺ではない。エルンストは視線を宙に移す。

フィーアは俺を信じて待っているはずだ。

すり抜けようとするならつかむまでのこと。


幻にさせないために何をすればいい?

まずはファーレンハイトと連絡を取らなくては。向こうでも動いてくれているだろうが、今俺が動くことは無理だ。

ヘレナかルイーズに買い物に行かせて、それで連絡が取れないだろうか?

それとも夜を待って俺が屋敷を抜け出せないか?

今すぐにでも助けに行きたい。


エルンストはその長い指でギュッとシーツを握りしめた。