たとえこの身が焼かれてもお前を愛す

フィーアは元門番がいた牢の入口から一番近い牢に入れられた。

そこは空気の流れが僅かに感じられて他の牢より幾分ましだった。

「フィーア殿。このような場所に王家の姫を閉じ込めるのは誠に恐縮の極みですが、少しの辛抱です。必ずエルンスト閣下とお迎えに上がりますゆえ」

胸に手をあててファーレンハイトはかしずいた。


フィーアは精一杯の笑顔で答えた。


フィーアの堂々とした態度がファーレンハイトの心を揺さぶった。

この方はどんな環境でも、文句の一つも言わない。ファーレンハイトは感心せずにはいられなかった。

こんな場所でも高貴な態度を崩さない。普通の貴婦人だったら恐怖のあまり泣き叫ぶだろうに。

エルンストが命をかける女性。もし自分と先に出会っていたら....。


邪念を振り払うようにファーレンハイトは首を振った。


ファーレンハイトが去り、暗く湿った牢の中で壁にもたれてフィーアは脱力感に襲われていた。

ファーレンハイトは『あなたを皇帝殺しの罪人にしたくない』と言ったけれど、あの憎き男を殺してしまったほうがどんなに良かったか。

そうすればその場で自らの命を絶ち、こんな目にも合わなかった。

フィーアは力なくため息をつくと、今はエルンスト様を信じてここから出ること。そして.....。


必ず皇帝ゲオルグをこの手で屠ってみせる。


暗い牢の中で独り誓っていた。