たとえこの身が焼かれてもお前を愛す

「なっ.....」

驚いたエルンストはベッドから体を起こす。


服をきちんと着直したフィーアはベッドに座るエルンストと対峙していた。


「わたくしの命を拾って下さったご主人様には感謝いたします。
ですが、たとえ奴隷の身であっても、愛していない男に抱かれたりは致しません」


「これは...」エルンストは面白そうにフィーアを見つめた。


「主人への狼藉は死罪に値する。覚悟はいいか」


「....はい。わたくしの命はご主人様のものです。ご主人様に逆らった不届き者として、どうかこの場で屠ってくださいませ」

奴隷とはそんな身分だ。
生かすも殺すも主人の意志でどうにでもなる。もちろん奴隷を殺しても罪には問われない。


言い終わると片ひざをついてエルンストの前にかしずいた。


そんなフィーアをまじまじと見つめながらエルンストはあることに思い至っていた。


カールリンゲン国に限らず、数か国がひしめく大陸では身分によって言葉使いや発音を使い分けている。

明らかにこの娘の発する言葉は上流階級のものだ。

貴族の娘なのか?


「面白い」

エルンストがフィーアの前に立つと、フィーアは死を覚悟して、静かにこうべを垂れた。
その死を恐れぬ堂々とした態度に更に驚いた。