たとえこの身が焼かれてもお前を愛す

さっきまで目を伏せていたフィーアは今度はゲオルグをじっと見据えている。


「世はそなたに二回ほど会っているな。
一度目はフォーゲルザンクの王宮で。二度目は世の城の近くで。あの時はメイドの服を着て酔っ払い相手に立ちまわっていた。よもやとは思ったが、やはりそなたであったな」

フィーアは答えない。

「これで三回目。又、そなたと再会できるとは思ってもみなかったぞ、フィーア」


ゲオルグは意味深な笑顔をフィーアに向けてくる。

「しかしフォーゲルザンクのお姫様が、どうしてこんなところで侍女をしているのか不思議でならぬ。
風の噂でフォーゲルザンク家のフィーア姫は奴隷商人に売られたと聞いていたのが?」


ゲオルグの言葉はファーレンハイトやコンラートを打ちのめすのに充分だった。


王家の姫君が奴隷?!ファーレンハイトは困惑の色を浮かべながら、エルンストに視線を送っている。

エルンスト自身もフィーアがフォーゲルザンクの姫君だったことは、たった今知ったばかりだ。激しく動揺し、戸惑いを隠せない。


「エルンスト説明せいっ!何故奴隷がここで侍女をしておるっ!侍女は下級貴族の娘と決められていようがっ!!」


ああ、恐れていたことが....。コンラートは目を覆った。
これでベーゼンドルフ家は終わりだ。
先代からお仕えして40年。まさか自分の代でこの名家の歴史が閉じるとは。

あまりの衝撃でコンラートはフラフラとよろめいてしまった。

「危ないっ」フィーアがその体を支えるよう駆け寄る。


「奴隷と知りつつ屋敷に置いたのは私の責任。私はどうしたらいのだ?」

コンラートは申し訳なさそうに涙を浮かべるフィーアを抱き寄せた。


そんな二人を切なそうに見つめていたエルンストだったが、

「恐れながら訳あって奴隷商人から買いました」

静かに口を開いた。


「それだけでは分からぬわ!!」ゲオルグは拳を振り上げる。


「はっ。フィーアの立ち振る舞いなどから侍女にさせても良かろうと考えた次第です」

堂々とゲオルグを見据えるエルンストに一瞥を加えると、今度はフィーアに向き直った。

「ではフィーア。お前は何故自分の過去を話さなかった」

今にも倒れそうなコンラートを支えながらフィーアはゲオルグに向き直ると、

「身分が最下層の奴隷である以上、何を言っても無意味だと思って黙っておりました」

きっぱりと言葉を放った。