たとえこの身が焼かれてもお前を愛す

*****

フィーアは蛍の丘にいた。

「雨に打たれて死ねたらいいのに。雨がわたしを溶かしてくれればいいのに」


天を仰ぎ、両手を広げ雨粒を全身にうける。


ここはエルンストと、きちんとお互いの気持ちを確かめあった場所だった。

奴隷となった私を愛してくれた人。

幸せな想い出をくれた人。

私の心を鎖でつないだ人。


出会わなければ良かった。


貴族と奴隷が愛しあうなんて絶対に許されない。
私はそんな世界に生きている。


愛が苦しみに変わることなど知らなかった。

激しく全身を叩きつける雨はフィーアの涙を押し流す。

屋敷を出たところで小娘一人では生きていけない。娼婦になるか、もう一度奴隷に戻るか。


「何度も救って頂いた命なのに、ごめんなさい」

死を選ぶことが決していいことだとは思わない。


フィーアはいつも不安の中にいた。自分の存在がエルンストを窮地に追い込みはしないか?

もし二人が引き離されることがあったら?


奴隷の身分が足かせになって身動きが取れない。悩み苦しんでも解決しない宿命。

未来が不安で、苦しくて。

永遠に続く深い闇。

解放されたい。

だから私が消えるしかない。そうすればエルンスト様の未来は傷つかない。

時がたてば私のことなど忘れてしまうだろう。


選ぶ道はもう......。


フィーアはその場に両ひざをつくと、胸元からいつぞや手にいれた短剣を取り出し、自分の喉元に突き付けた。


激しくなる雷光。


「エルンスト様、愛しています」