たとえこの身が焼かれてもお前を愛す

静かになった執務室で、「本当に世話の焼ける上官だっ」ファーレンハイトがエルンストをにらんだ。


「何だとっ!」怒鳴ってみたものの、「お前には教えられてばかりだ」エルンストは空虚な瞳で天を仰ぐとそうつぶやいた。


フィーアへの想いは俺の自己満足だったのか?

俺の前であいつは無理をしていたのか。

フィーアの過去を、奴隷と言う身分をエルンストは気にしているつもりはなかった。

だが、フィーアは気にしていたのだ。

それであれこれ悩み、苦しんでいた。だから冥界へ行きたいなどと言ったのかっ。

あいつはベーゼンドルフ家の将来を案じて俺の前から姿を消そうとしたのかっ。

俺に妻をめとれと....。

あいつの気遣いにどうして俺は気づいてやれなかったのだ。



エルンストは床に拳を叩きつけていた。


ひとり黙考するエルンストに、「フィーア殿を泣かせるな」ファーレンハイトは執務室を後にした。




残されたエルンストは手の甲で口元の血をぬぐうと、窓際に立った。

今からでも遅くはないだろうか?

見つめる闇の先、今だ雨も雷もやんでいなかった。