たとえこの身が焼かれてもお前を愛す

エルンストの部屋の前まで来ると、へレナはノックをする。


「入れ」中から声がする。


ドアを開けると、部屋の明かりは落とされわずかなローソクが揺らめいていた。

ご主人様はこの娘を抱く気だ。へレナは確信した。


「いいフィーア、ご主人様とお話をしなさい。沢山お話をすればきっと気づいてくださる。分かったわね」

小声でささやく。


へレナの真意をつかめず、ただうなずくフィーア。

二人が部屋の中ほどまで入ってきたところで、エルンストが声をかけた。


「ありがとうへレナ、お前はもう休め」


「あの、この娘は....その....」


「どうした?」切れ長の鋭い瞳がヘレナを貫いた。


わたしの口から言っても無駄だ。ヘレナは思った。

ご主人様ご自身で気づいて下さらなければ恐らく何を言っても....。


「いえ。失礼いたします」

静かに頭を下げると、ヘレナはフィーアの小さな手をギュっと握って部屋を後にした。