たとえこの身が焼かれてもお前を愛す

────食事を済ませたフィーアを従えて、ヘレナはエルンストの部屋がある屋敷の三階へと向かう。


「いい?ご主人様の命令は絶対なの」


「はい」


蚊の鳴く声でフィーアは答える。


ああ、どうか神様。この子をお救い下さい。ヘレナは祈らずにはいられなかった。


「何があっても我慢するのよ」


「はい。もともとわたくしの命は無いものと思っておりました。
奴隷商人にムチ打たれることに比べれば、つらいことなどありません」


言葉を交わせば交わすほど、ヘレナは切なくなる。

だが、この娘がたとえ良家の子女であっても、奴隷の烙印を押されてしまえば奴隷として一生を送らねばならない。背中に押された焼印は決っして消えることはない。

ご主人様、どうか.....ヘレナは天を仰いだ。