たとえこの身が焼かれてもお前を愛す

程なくしてそこへ憲法裁判所長官エグムントが文官を伴って姿を現した。

鼻の下にひげを蓄えチェーンのついた片眼鏡をかけている。いかにも法の番人といった風貌だ。

「何事ですかな?エルンスト殿」


エルンストはエグムントに敬礼すると、「皇妃暗殺未遂の容疑者を捕まえました」
そう言って偽の女官を差し出した。


「公平な立場から、長官には尋問の証人として立ち会って頂きたい」

側室グレーテの元恋人ベッヘムを死なせてしまった経験を生かしての事だった。

あの時もしエグムントを呼んでいれば少なからず今とは違った結果になっていたはずだし、証拠も残せていた。

エルンストは後悔していた。だから同じ過ちは犯さない。懸命な判断だった。



「何とっ?!」


驚いたエグムントだったが、法の番人としての使命を全うすべく文官に尋問の記録を命じる。



後ろ手に縛られ、床に座っている女にエルンストは話しかけた。


「そなたの雇主の名は?」


女は唇を固く閉じている。