たとえこの身が焼かれてもお前を愛す

灰色の液体が床に広がる。


「水銀?!」

一度広がった液体は綺麗に丸く形を変えた。

この女は側室グレーテの手の者?!


フィーアは逃げようとする女の腕をとっさにつかんだ。


その手を振り払おうとして女は抵抗する。


二人はもつれながら食器棚や作業台にぶつかり、辺りに派手な音を響かせた。


音を聞きつけた、女官たちやゾフィーが駆けつけて来る。


「シュバルツリーリエのエルンスト閣下をっ!!急いでっ!!」

フィーアは叫んでいた。


「は、はい」女官の一人が走って呼びに行く。


「フィーアどうしたの?」


ゾフィーが心配そうに顔をのぞかせた。


「皇妃様いけませんっ!早くお部屋にお戻りください!!」


一瞬とまどった顔をするゾフィー。


「水銀です。夏場はすぐに気化してしいます。吸い込まれたら中毒をおこしますっ!!」


顔色を変えた別の女官が「皇妃様っ!!」ゾフィーの腕を強引に引っ張ってその場を離れていく。

それを見て、取りあえずフィーアは胸をなで下ろす。