たとえこの身が焼かれてもお前を愛す

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フィーアはやりきれない気持ちを抱えたまま、無為な日々を過ごしていた。

そんなある日のこと。フィーアがいつものようにゾフィーの元を訪れていた時。


ゾフィーがお茶のお代わりが欲しいと言うのでフィーアは炊事場にお湯を取りに行った。

見慣れない女官が入口に背を向けて、何か作業をしている。


「あなたは?」


声をかけると、その女官は驚いて振り向いた。


「見かけない顔ですね?」


「そ、その私は本日より皇妃様のお世話を.....」


目は宙をさまよい、声は震えている。何かがおかしい?


女官やゾフィーからもそんな話は聞いていない。


注意深く女に近づく。


明らかに女は動揺している。


フィーアが距離を詰めていくと、不用意に動いた女の手が台に乗っていたガラス瓶に当たった。


と、”ガッシャーン”派手な音をたてて瓶が床に砕け散った。