たとえこの身が焼かれてもお前を愛す

「それがあなたの本心ですか?」


本心であるわけがない。

だけれど、それをどうしてあなたに言えましょうか?

フィーアは涙をぬぐうと「突然すみません。驚かれたでしょ」軽く笑って見せた。


「あなたはお幸せですか?」もう一度聞いてきた。


が、フィーアはそれには答えなかった。


「あなたの恋人がエルンスト閣下でなければ、私があなたを奪っていました」

ファーレンハイトの唇がフィーアの耳の下の首筋あたりにそっと触れた。



心臓がドキンッと跳ねて思わずフィーアは足を止めてしまった。



「失礼します」彼はクルリと背を向けると、もと来た道を帰っていった。


フィーアはぼう然と立ち尽くすと、夕日に照らされた彼の背中を見送っていた。