たとえこの身が焼かれてもお前を愛す

「閣下はあなたを愛していらっしゃいますよ」


ファーレンハイトの言葉が逆にフィーアを切なくさせる。


私だって愛している。

だから身が引きちぎられそうだ。

結ばれただけで良いではないか。いつもそう自分を騙すように慰めている。



だけどもし、エルンスト様が跡継ぎを欲したら?

母親が奴隷でいいはずがない。


もし、一族の方たちが結婚と言う形態を望んで来たら?

恐らく彼は拒否するだろう。しかし名家を絶やしていいものか。私は彼に結婚を勧めるわ。

愛人と言う選択しもあるがフィーアの矜恃がそれを許さなかった。
彼の妻への負い目をあるし、何より彼と妻が寄り添う姿を見たくない。


彼は私を愛してくれている。だから私から姿を消さなくてはいけない。



フィーアのグレーの瞳からぽろぽろと涙がこぼれ落ちてきた。



.....?!

ファーレンハイトはフィーアの腕をつかんでいた。



大きく見開かれたファーレンハイトのコバルトの瞳はフィーアのそれに向けられている。


視線がぶつかった。



「辛い思いをされているのですか?」


ファーレンハイトの瞳に射抜かれてフィーアは激しく動揺していた。


「いいえ、わたくしは侍女です。愛だの恋だの関係ありません」