たとえこの身が焼かれてもお前を愛す

「最近は物乞いが増えて困っています。あなたも気をつけないと、たかられますよ」

ファーレンハイトは老婆の姿を目で追いながら言う。

老婆は細い路地へと入ったようだ。


「助けていただいてありがとうございます」


「宮廷のごたごたのせいで、経済が停滞しているのでしょう。宮廷の皆さんは経済活動より自らの地位をかけた智謀知略に力を注いでるんですから。困ったものです」

ファーレンハイトはさも下らないと言いたげだ。


「町の人たちに、こんなすぐに影響が出るのですか?」


「ええ、特に城下は直結していると言っていいでしょう。城に物資を卸している商人も多いですし影響は計り知れません。隣国との貿易も滞ているようですし」



そう言えば、花屋のギードも売り上げがだいぶ落ちたって言ってた。


このまま宮廷闘争が続いたら、町はどうなってしまうの?

もっと物乞いが増えたら?考えるだけでも不安だ。



エルンスト様もあまりお屋敷にお帰りにならない。

それだけ今、宮廷は大変なのだろうか?

一抹の不安を感じながらフィーアはファーレンハイトと町の目貫通りを歩いていた。