たとえこの身が焼かれてもお前を愛す

「しかし、あなた本当に奴隷の子なの?」

フィーアの前に座ると、ヘレナが首をかしげた。

「私はそんなに奴隷を知ってるわけじゃないけど、あなたみたいに品のある奴隷は初めてよ」


「.....」


「最近は若い娘をさらって奴隷にしてしまう輩もいるみたいだけど、まさかあなたもそうなの?」


「.....」


「へレナさん、もうその辺でやめてあげたら?」


へレナの問いかけに答えられないフィーアに助け船を出してくれたのは、ルイーズだった。

 
ルイーズはフィーアと同い年の19歳で、そばかすがまだ残る童顔の娘だった。茶色の髪は三つ編み。これが彼女の定番だ。


「あたしはルイーズ。同い年同士、仲良くやろうよ」


ルイーズはへレナと違って革新的な考えを持っていた。
身分制度に疑問を感じていたから、奴隷をさげすむような言動は決してしなかった。

大半の人間が”奴隷の子孫も罪人”と考える風潮の中で、

たとえ奴隷の子であっても、その子が罪を犯したわけじゃないのだし、
奴隷の子は孤児院に入れて育てるべきだとルイーズは考えていた。