たとえこの身が焼かれてもお前を愛す

「フィーア。下の名はなんと?」


フィーアは口を閉じてしまった。


「ご主人様、奴隷に下の名などごさいませんよ」

フィーアの為の食事を運んできたヘレナが代わりに答えた。


「そうだな」

奴隷商人の言った通り、確かに上玉だ。
金貨50枚でも安いくらいだ。

エルンストはフィーアから視線を外すことが出来ないでいる。



「ご主人様がいらしてはフィーアも緊張して食事が喉を通りません。お部屋にお引き取り下さいませ」


「ああ。ではへレナ。フィーアの食事が済んだら俺の部屋に連れてこい」


「承知いたしました」


エルンストが食堂から出て行くのを見届けると、へレナがフィーアに優しく声をかけた。


「さあ、召し上がれ」

料理の乗った皿を置いた。


「はい」