「大変申し上げにくいのですがグレーテ妃と関係をお持ちになりましたね」

優しい口調だが、ファーレンハイトの瞳は相手の心を鋭くのぞき込むようだ。

「い、いいえ」

この期に及んでシラを切る気か。二人の会話を聞きながらエルンストはイラっとするが、尋問はファーレンハイトに任せている。
ここで口出しは出来ない。


「いいですか、あなたは命を狙われているんですよ。皇帝陛下がすぐに処断しなくても、ゲルフェルト伯爵の手の者に殺されてしまいます」


ベッヘムの顔からは大量に汗が流れている。


「皇帝陛下は我々にあなたを拘禁せよと仰せになった。それが幸いしたのです。
拘禁と見せかけて、保護しているんですから。その程度の事を分からないあたなではないでしょう?」


それでもベッヘムは下を向いたまま何も語ろうとしない。

尋問を担当しているファーレンハイトはあきれ顔でため息をついた。