たとえこの身が焼かれてもお前を愛す

────夜もふけた頃、酒のせいもあってうたた寝をしていたエルンストを夢から引き戻したのは、部屋の戸を叩く音だった。


「ご主人様」言いながらカチャリとドアノブが回る音がする。


ヘレナだった。


「夜分に申し訳ありません。娘が意識を取り戻しました」


「.....ああ」あまり興味を示さないエルンスト。



「只今ルイーズが風呂に入れております。もうそろそろ出て参りますが、お目通りされますか?」


「そう...だな」


重い腰を上げると、ヘレナの後に続く。


長い廊下を抜け案内されたのは使用人の食堂だった。


「入浴後に食事をさせようと思いまして。支度が済みましたらここに連れて参ります」


「そうか」短く答えた。

自分は慈善事業家ではないし、善人でもない。
むしろ人並みの生活をさせてやればそれで良かった。