たとえこの身が焼かれてもお前を愛す

「お前が俺の腕からすり抜けて、蝶のようにどこかに行ってしまいそうだ」

優しい微笑みを作ると、フィーアはエルンストのほほをなでる。

「わたくしの命はあの日からエルンスト様のものですわ」


あの日、そう奴隷商人から解放してくれた日から。


「それは、命は俺のものでも心は違うと聞こえるぞ」


「まあ、意地悪を」

二人が初めて逢った日は、決っして良い想い出ではない。

「気になさっているのですか?」


「時々思い出す」


「わたくしは忘れていましたわ。エルンスト様が沢山の愛情と幸せを下さいましたから」

エルンストはうつろな瞳でフィーアを見つめている。

「ご安心ください。わたくしの心もエルンスト様のものです....」

私たち二人のいずれ訪れる愛の終焉が来るまでは。最後の言葉はフィーアの胸にそっとしまい込まれた。

奴隷と貴族。この関係に終わりが来ないはずはないのだから。

切ない表情でフィーアはエルンストの瞳を覗き返した。