たとえこの身が焼かれてもお前を愛す

「うむ.....本来ならばそうなのだがな.....」

ユンゲルスは冴えない表情を浮かべる。


「伯父上?」


「ゲオルグ陛下が側室をとられたことは、お前も知っておるな?」

側室はゲオルグがエルンストの為に開いた、例の宴で出会った内のひとりだった。


「はぁ.....」わずかに後ろめたさを感じる。


「グレーテ・フォン・ゲルフェルト。お前も名前くらいは知っておろう?」


エルンストの頭に小太りで脂ぎった男の顔が浮かんだ。

ゲルフェルト侯爵。この国にいる4人の大臣のひとりで、かなりの有力者だ。

その娘グレーテの顔は思い出せない。

さて、黄色のドレスか、赤いドレスか?それとも後から参戦したピンクのドレスか?
そんな不遜なことを考えていた。


「グレーテは20歳でゾフィーより三つ年下なのだが、どうやら妊娠しているらしいのだ」


?!


まさか同時にお子が誕生する?

これは災いの種となりそうだ。

一抹の不安がよぎるエルンストだ。

この国は第一子が帝位を継ぐ。男でも女でも構わない。
要は皇帝の種であればいいのだ。正室だろうが側室だろうが関係ない。


出産時期が近ければ大問題だ。

エルンストとしてはゾフィーの産んだ子を当然帝位につけたいが、側室の後ろ盾であるゲルフェルト侯爵も黙ってはいないだろう。

皇帝も罪なことをなさる。自然とため息が漏れる。