女官に皇妃の間に通されると、

「ああ、エルンスト兄さまっ!!」

ゾフィーが駆け寄ってくる。


ゾフィーはエルンストのひとつ年下のいとこだったが、小さい頃からエルンストのことを”兄さま”と呼んでいた。


「皇妃様にはご機嫌麗しゅう」

形式通りの挨拶をするエルンストにほほを膨らませるゾフィー。


「兄さま、公式の場以外では昔のように接するお約束です」


「そうだったな」笑顔をつくる。


エルンストが視線を感じそちらへ目を向けると、そこにはゾフィーの父でエルンストの伯父にあたるユンゲルス・フォン・ベーゼンドルフの姿があった。


これはただことではない。とっさにエルンストは察した。


「伯父上、お久ぶりです」

エルンストの差し出した手を握ると二人は握手を交わす。


「お互い忙しくてゆっくり話をする暇もなかったな」


伯父のユンゲルスはこの国の宰相を務めていた。