たとえこの身が焼かれてもお前を愛す

ベーゼンドルフ家はカールリンゲンでは名門で、皇帝から五爵位ある中で二番目にあたる侯爵を賜っていた。

皇帝付騎士団の団長は世襲制で、代々武門の誉高いこの名家が務めている。


エルンストで8代目だ。


エルンストの母は彼が幼い時に、弟の出産のひだちが悪く命を落としてしまった。
その弟も産声をあげてから数日の後に感染症で短い人生を閉じた。


父は後妻をとることもなく、当時侍女だったヘレナに育児を任せていた。


そんな父も今はこの世にいない。

一昨年のことだった。
カールリンゲン国と国境を接する、シュタインベルグ国と大きな戦いがあった。

騎士団長であったエルンストの父は先頭に立ち、剣を振るい勇敢に戦ったがあえなく敵の手に落ち、その後自らの命を絶った。とエルンストは伝え聞いていた。

エルンスト自身もその戦いでかなりの深手を負っている。