たとえこの身が焼かれてもお前を愛す

「そうは申しません。違う奴隷商人に改めてお売りになればよろしいかと」


今も昔も奴隷になるのは罪人とその家族がほとんどだった。家族の誰かが罪を犯せば連帯責任を取らされていた。


しかし長い歴史の中で奴隷同士から子供が生まれることも多々ある。不幸なことだが、奴隷の子供は奴隷。
負の連鎖は永遠に断ち切ることはできない。


それにしても人間のサガなのだろうか?奴隷同士が何故交わる?何故不幸な子供を作る?エルンストは憤りを覚える。


冷めた視線の先に横たわる娘に憐れみの感情が、ふと湧いた。


「この娘はどちらだろうか?」

「いずれにしても罪人と同じ血が流れているだけで罪深いのです」


諭すように優しく語りかけるヘレナ。


母親のいないエルンストはヘレナを自分の母のように慕っている。
ヘレナにそう言われてしまうと、無理に女奴隷を屋敷に置く気が無くなってしまう。




「ですが....」

ヘレナはためらいながらも、言葉を続けた。


「見たところ年若い娘。エルンスト様がどうしてもとおっしゃいますのなら、わたくしも何とかいたします」


深々と頭を下げるへレナにエルンストはしばらく考えていたが、「たのむ」そう言い残して屋敷へと姿を消した。