たとえこの身が焼かれてもお前を愛す

主人の意に反して恐縮することしきりのコンラートに向かって「ヘレナを呼べ」そう言い残して、エルンストは屋敷の外へと向かった。


ヘレナとは侍女長で年のころは50歳。

美人ではないが、ふくよかな体つきで優しいお母さんと言ったところだろうか。


ほどなくしてヘレナがやって来た。


「お呼びでしょうか?ご主人様」


屋敷の裏庭に敷かれたゴザに寝かされている女奴隷を見つめていたエルンストにヘレナが声をかける。


「ああ、この娘を風呂に入れてくれ」


「ふ、風呂にでございますか?」


ヘレナも驚きを隠せない。


「お言葉ではございますが、奴隷を風呂に入れるなどめっそうもございません。けがれを屋敷に入れるなどもっての他です」


「けがれか.....ではどうしろと言うのだ?このままここで死なせよ。と言うのか?」


ヘレナは困った顔をした。